博多雑煮の定番具材「かつお菜」とは~福岡でしか食べられていない?

博多雑煮の定番具材「かつお菜」とは~福岡でしか食べられていない?

正月の雑煮に入れる具材といえば、何を思い浮かべるでしょうか。大根、にんじん、かまぼこ。鶏肉を入れる地域と、代わりに魚介を入れる地域もあるでしょう。ところで、福岡市などで親しまれている「博多雑煮」には、「かつお菜」という野菜が定番で入ります。福岡県外ではほとんど流通していないこの野菜、いったいどんな野菜なのでしょう?

◆博多雑煮の定番具材「かつお菜」とは?
「博多雑煮」は、ブリやかまぼこなど比較的多くの具材が入っているのが特徴です。福岡市博多区にある雑煮専門店の代表は「具材に決まりはない」と言いながらも、定番で入れる具材があるそうです。

雑煮のせき亭 関健太郎代表「何を入れてもいいと思っているんですけど、やっぱり入れていないと怒られるのがかつお菜ですよね」

「かつお菜」。福岡県外の人にはなじみの薄い野菜ではないでしょうか?かつお菜はアブラナ科の葉野菜で、福岡市を中心に糸島市、北九州市など福岡県内各地で生産されています。福岡市の農林水産局によると、栽培が始まったのは江戸時代中期ごろ。旨味成分であるアミノ酸が豊富に含まれていて、「かつお出汁がなくても美味しい」という意味でこの名前が付けられたということです。漢字では「勝男菜」と書くことから、縁起物として正月に使われるようになり、江戸時代からすでに「博多の雑煮の定番になっていた」という説もあります。高菜とよく似た野菜ですが、辛味は無く、旨味が強いのが特徴です。

◆「お雑煮以外でも食べてほしい…」生産者の思い
久留米市田主丸町でかつお菜を栽培している田中彰治さん。かつお菜の旬は12月から2月で、繊細な野菜であるため、収穫などはすべて手作業で行います。正月前のピーク時には、普段の10倍近い需要があるといいます。

田中彰治さん(Q.今年の状態は?)「全体的にOKです」「12月の最後の週からがピーク。900枚~1000枚ぐらい収穫します」

田中さんは、雑煮の具材以外でもかつお菜を食べる機会を作って欲しいと話します。

田中彰治さん「白菜を漬けるようにかつお菜を漬けてもらうと風味があってかなりおいしい」

しかし、福岡県内でもお雑煮の具材以外ではほとんど見かけることがないのが実情。ましてや県外出身者に至っては…

県外出身者(Q.かつお菜は何に使われていると思う?)「全然分からないです」「年末にみんなが買っているのを見て何に使うんだろうと。地元だと見かけないものなので…」

◆福岡県外にはほぼ流通していない…変化の兆しも
県外の人がかつお菜を知らないのも無理はありません。福岡市の農林水産局によると、かつお菜は福岡県以外にはほとんど流通していないそうです。生産も99.8%が福岡県内。同じ葉物野菜でも、ほうれん草や小松菜などは国が1970年代ごろから広域での流通を支援していて、各地で生産されています。しかし、かつお菜は支援の対象ではないため、生産エリアが広がらず、地元だけに需要がある「伝統野菜」として残ったという経緯があるようです。全国的な知名度は低いと言わざるを得ないかつお菜ですが、青果市場の関係者は、最近は県外からの引き合いもあると話します。

福岡大同青果 中山采佳さん「一部長崎県や関東圏に販売を行っている場合もあります。名古屋に住んでいる消費者からかつお菜を食べたいけどどこに売っていますか?と問い合わせを受けたこともありました」

また、生産農家に消費者から直接注文がくるケースも。全国の売り場に並ぶ京都の伝統野菜「万願寺とうがらし」のように、かつお菜が福岡県以外の街でも売り場に並ぶ日が来るかもしれません。

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