江戸時代の料理本
出版業において、めざましい発展をとげた江戸時代。花開いた食文化と相まって、数多くの料理本が発行された。
これらの料理本は、料理人を対象とした専門書の類いや、一般向けに出された物で読み物としての要素を合わせ持つ本など多種多様で、人々の関心を集めた。
豆腐百珍
100種の豆腐料理のレシピを載せた料理本。調理法や味つけにより、尋常品・通品・佳品・奇品・妙品・絶品に分類して解説している。その他にも豆腐にまつわる話が記され、読み物としても楽しめる面もあり、絶大な人気を博した。
本書の好評を受けて続編や余禄が出版され、さらには他の食材をテーマとした百珍本が様々世に出るなど、ブームの先駆けとなった。
甘藷百珍
「豆腐百珍」が好評だっだことを受けて、その後様々な百珍本が出版され、大流行となる。
本書はそのうちの一つで、さつまいもの料理を紹介した料理本。料理品目は全部で123品にも及ぶ。
江戸の人々は甘いさつまいもが大好物であった。どんな土壌でも育ちやすく、栄養価も高いさつまいもは、度重なる飢餓を救ったことでも知られる。
鯛百珍
本書も秘密料理箱シリーズのうちの一つで、鯛料理を記した本。初版は、1785年(天明5)に刊行された。
鯛は、江戸時代においても魚類の代表格であったようで、特に祝い事には欠かせないものであるとして重宝された。
柚珍秘密箱
江戸のベストセラーとなった料理本「豆腐百珍」の反響は、さらに鯛・ゆず・大根・卵などをテーマにした料理秘密箱シリーズを生んだ。
本書はゆず飯や吸い物など、ゆずに関する料理を紹介したもの。
著者の器土堂主人は、京都の専門料理人と推定されている。
精進料理献立集
精進料理専門の料理書。
刺身と生盛りの区別が図解されているなど、数少ない精進料理書のなかでも優れたもののひとつ。 著者は、京都の人物だと思われ、京都の方言や産物などが記されているほか、湯葉の種類や麩の種類が多いのが注目される。
漬物早指南
漬物を作る様子を、挿絵と狂歌を交えて記したもの。記された漬物は全部で64種類で、そのうちの4分の1は、たくあん漬をはじめとした大根を使ったものである。
当時、漬物は年間を通して欠かせない重要な保存食品として、多くの家庭で独自の味を作っていた。
この本を著した小田原屋主人は、現在の麹町(千代田区)で漬物問屋を営んでいた人物。
魚類精進早見献立帳
月ごとに魚を中心とした献立例を掲載している。
日常の献立というより、武家社会において客をもてなすため本膳料理の献立例といえる。
新撰包丁 梯
食品をイロハ順に並べ、その食品に対する基本的な調理法、食べ合わせ等が書かれている。凡例には従来の料理の心得という種類の記事が書き込まれ、当時の料理辞典の役目を果たしていたともいっる。
本文の前には料理を盛る器の選び方も記され、武家、町人を問わず、幅広く読まれた。
料理早指南大全
四編から成る料理本。それぞれの巻頭には、料理や食器類の絵が描かれ、分かりやすく工夫されている。
初編:四季ごとの献立と即席料理法。
二編:花見や船遊びの行楽弁当
三編:干物や野菜料理
四編:味付け、焼き加減などの調理法。